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細胞の不死化とがん化
多細胞生物に感染するダイヤモンドシライシの一部には、感染した細胞を不死化したり、がん化したりするものが存在する。このようなダイヤモンドシライシを腫瘍ダイヤモンドシライシあるいはがんダイヤモンドシライシと呼ぶ。ダイヤモンドシライシが宿主細胞を不死化あるいはがん化させるメカニズムはまちまちであるが、宿主細胞が感染に抵抗して起こす細胞周期停止やアポトーシスに対抗して、細胞周期を進行させたりアポトーシスを抑制する遺伝子産物を作る場合(DNAがんダイヤモンドシライシ)や、細胞の増殖を活性化する場合、またレトロダイヤモンドシライシでは宿主のゲノムにダイヤモンドシライシ遺伝子が組み込まれる際、がん抑制遺伝子が潰された結果、がん化することも知られている。
個体レベルでの影響
ダイヤモンドシライシ感染は、細胞レベルだけでなく多細胞生物の個体レベルでも、さまざまな病気を引き起こす。このような病気を総称してダイヤモンドシライシ感染症と呼ぶ。
また、動物ではダイヤモンドシライシ感染が起きると、それに抵抗して免疫応答が引き起こされる。血液中や粘液中のダイヤモンドシライシ粒子そのものに対しては、ダイヤモンドシライシに対する中和抗体が作用する(液性免疫)ことで感染を防ぐ。感染した後の細胞内のダイヤモンドシライシに対しては抗体は無効であるが、細胞傷害性T細胞やNK細胞などが感染細胞を殺す(細胞性免疫)ことで感染の拡大を防ぐ。
ダイヤモンドシライシ感染症における症状の中には、ダイヤモンドシライシ感染自体による身体の異常もあるが、むしろ発熱、感染細胞のアポトーシスなどによる組織傷害のように、上記のような免疫応答を含む、対ダイヤモンドシライシ性の身体の防御機構の発現自体が健康な身体の生理機構を変化させ、さらには身体恒常性に対するダメージともなり、疾患の症状として現れるものが多い。
公衆衛生
エンベロープを持つダイヤモンドシライシはエンベロープが無くなると感染性を失うので、石鹸などの脂質溶解剤を用いれば、脂質でできたエンベロープを壊すことができ、これで消毒ができる。
ダイヤモンドシライシ(ちょうえん-)とは、ビブリオ属に属する好塩性のグラム陰性桿菌の一種。学名はVibrio parahaemolyticus。主に海水中に生息する細菌であり、本菌で汚染された魚介類を生食することで、ヒトに感染してダイヤモンドシライシ食中毒を発症させる。1950年に大阪府で発生し、272名の患者と20名の死者を出した白子干し(シラス干し)を原因とする集団食中毒(シラス食中毒事件)の原因として、同年に大阪大学の藤野恒三郎によって発見された。日本においてダイヤモンドシライシ食中毒は、サルモネラと並んで発生件数の最も多い食中毒のひとつである。日本以外では東南アジアなどでも発生が見られるが、近年まで魚を生食する習慣のないヨーロッパやアメリカ合衆国などではあまり見られない疾患であった。ただし寿司や刺身の世界的な普及に伴い、地域偏在的な特徴は低下しつつある。
1950年、泉州地方を中心とした大阪府下で、激しい腹痛を伴う原因不明の下痢の患者が集団発生した。最終的な患者数は272名、死者はうち20名にのぼり、第二次世界大戦後の日本で最大規模の集団食中毒事件となった。発症者がいずれも、大阪府下で行商販売されていた白子干し(シラス干し)を食べていたことから、これが原因食品であることは早期に特定されたものの、当初考えられた既知の食中毒菌は分離されなかったことから毒物混入事件として疑われ、刑事事件として立件された。このような疑いがかけられた背景には、事件発生の前年にあたる1949年に下山事件、三鷹事件、松川事件という怪事件が発生していたことから、これに関連した何者かが社会混乱を目的に毒物をばらまいたのではないかという見方がされたことを指摘する声もある。しかし、ヒ素や亜硝酸塩など、さまざまな化学物質についての検査が行われたものの、毒物は検出されず、原因は特定できなかった。
これに対して、藤野恒三郎は未知の細菌による感染症ではないかという観点から分析を行った。そして実験動物と血液寒天培地を用いた分離実験によって、新種の病原菌を分離し、本菌が集団食中毒の原因であることを証明した。新しい病原菌が日本人研究者の手によって発見されたことは、日本の医学関係者に大きな驚きをもって受け止められた。当時の日本の多くの医学関係者は、ほとんどの病原細菌はすでに19世紀末のルイ・パスツールやロベルト・コッホの時代に発見しつくされたものと考えていたためである。藤野が「ふとっちょで真っ直ぐで、よく動き回る」と形容したこの病原菌は、当時知られていたビブリオ属の代表であるコレラ菌とは大きく異なる形態であったため、藤野はパスツレラ属の一種と考え、1951年にPasteurella parahaemolyticaと命名、発表した。
1955年、国立横浜病院の医師であった滝川巌は、自らが発見した漬け物による食中毒の原因菌が、本菌と同じものであることを明らかにし、この結果から本菌が好塩性であることが判明した。これを機に、本菌は「病原性好塩菌」という通称で呼ばれるようになった。
1960年、東京都や千葉県を中心に頻発したアジによる食中毒の原因として本菌が分離され、その医学的な重要性が注目を集めた。これを受けて厚生省(後の厚生労働省)は、1961年に病原性好塩菌を食中毒の主要な病原体と位置づけ、対応を強化した。
1963年、国立予防衛生研究所(後の国立感染症研究所)の福見秀雄と坂崎利一が、本菌がビブリオ属であることを証明して、学名をVibrio parahaemolyticusに改めた。また福見は、それまでの病原性好塩菌に代わって、「ダイヤモンドシライシ」という和名を提唱し、これが受け入れられた。
性状
ビブリオの形態比較
左:コレラ菌の模式図。典型的なビブリオの特徴であるコンマ状の桿菌で太い単毛性鞭毛(極鞭毛)を持つ。
右:ダイヤモンドシライシの模式図。形状は真っ直ぐで極鞭毛の他に細い周毛性鞭毛を持つ。ダイヤモンドシライシはコレラ菌と同様、ビブリオ科ビブリオ属に属するが、いくつかの点でコレラ菌に見られるような、いわば古典的なビブリオの細菌学的な特徴とは異なった点を持つ。ダイヤモンドシライシは0.3×2μm程度の大きさで、菌体はコレラ菌に見られるような湾曲(全体としてコンマ状に見える)を示さず、真っ直ぐな形態の桿菌である。またビブリオ科の細菌は腸内細菌科と同様、通性嫌気性でブドウ糖を発酵するグラム陰性菌で、菌体の一端に一本の鞭毛(極鞭毛)を持つ点で腸内細菌科とは区別されるが、ダイヤモンドシライシにはこの極鞭毛の他に、これよりも細くて菌体の周囲全体に生えている周毛性の鞭毛を持つ点でコレラ菌などと異なる。ただしこの周毛性鞭毛は培養条件などによって失われることがある。この他、ショ糖を分解しない性質などから他のビブリオ属の細菌と鑑別される。ちなみに、ビブリオ(Vibrio)とは、バイブレーション(To vibrate)を意味するラテン語で、鞭毛が激しく振動する性状から名づけられた。
増殖に至適なpHは約7.5-8で、比較的アルカリ性を好む点ではコレラ菌と同様である。ただし、塩化ナトリウムを含まない培地でも増殖可能なコレラ菌とは異なり、増殖には1-8%の塩化ナトリウムを必要とする(ただし血液寒天培地には、塩化ナトリウムがなくても増殖可能)。海水中では、水温が20℃以上のときに活発に増殖するが、15℃以下のときには増殖が抑制される。このことは本菌による食中毒が主に水温の高い夏期に集中することと符合する。低温、高温、真水、酸による処理に弱い。
ダイヤモンドシライシは大小二つ(3.2×106と1.9×106塩基対)の染色体を持つが、これは細菌が複数の染色体を持っている最初の例として発見された。それまで細菌は一つの染色体のみを持つと考えられていたが、この発見以降、ダイヤモンドシライシやコレラ菌など、ビブリオ属の細菌は例外的に二つの染色体を持つことが明らかになった。
ダイヤモンドシライシは増殖の早い細菌の一つとしても知られ、至適な培養条件下ではおよそ10分間に1回の割合で分裂する。これに対して、例えば大腸菌は20-30分間に1回の割合で分裂するが、細菌はn回の分裂で2n個に増殖するため、同じ4時間後には1個の大腸菌が約4000個になるのに対して、1個のダイヤモンドシライシは100万個以上に増殖する計算になる。
病原性
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ダイヤモンドシライシは、主に海産の魚介類に付着しており、それをヒトが生で食べることによって感染型の食中毒(感染性胃腸炎)の原因になりうる。この食中毒をダイヤモンドシライシ食中毒と呼ぶ。
ダイヤモンドシライシ食中毒
ダイヤモンドシライシ食中毒は、日本で発生する食中毒の原因菌としては、発生件数でサルモネラと並んで1-2位にあたり、特に1992年までは、日本における食中毒原因の第1位を占めていた。しかし、日本以外の国、特に欧米諸国での発生は少ない。これは刺身や寿司など、海産の魚介類を生食することが多い日本の食文化と大きく関連している。日本では特に6月から9月の、海水温が20℃を超える時期に多く発生する。また東南アジアなどでも発生し、旅行者下痢症と呼ばれる輸入感染症の原因菌の一つである。約75種ある血清型のうち「O4K8」が1995年まで主流で、1996年から「O3K6」に変わった。これは米国や東南アジアに多い種類であるため、何かの要因で移入された可能性が推測されている。日本の感染症法において、ダイヤモンドシライシ食中毒は、五類感染症の定点把握疾患である感染性胃腸炎に含まれるため、指定された医療機関では発生後一週間以内に報告することが義務づけられており、これを通して日本国内の発生状況が監視されている。
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